写真は子犬の頃のとらです (^^)
父の日エピソードにご応募頂きましたのでご紹介します♪
僕の親父――70代前半。存命。
頑固者で,融通が利かない。
機嫌が悪いと,何を話してもすぐに怒る。
雑談をしても,最後にはなぜか怒られる。
たまに相談事をしても,そんな必要はないと突っぱねる。
おまけに人のことをやたらと悪く言う。
率直に言えば,面倒くさくてわずらわしい存在。
年を重ねるごとに偏屈ぶりにも拍車がかかり,
とにかく自分本位で,付き合いにくくて仕方ない。
(こんな親父に付き添っている母親は,心底大変だと思う)
で,こんな親父だけど,少しはフォローを。
自営業のため,働く姿をずっと間近に見てきたわけだが,
(自分が大人になったからわかることだが)
頑固なせいか,仕事への取り組み方は真面目で,
廃業してからは僕の兄貴(つまり親父にとっては長男)の
仕事の手伝いを続け,張り合いを持って働いていたように思う。
その後,兄貴の手伝いもやめて,次は農作業に没頭するようになった。
自分はほとんど食べないくせに,消費しきれないほどの大量の野菜を
毎年何種類も栽培している。正直,迷惑なほど。
でも,味はまぁ,そこそこ評判がいい。
仕事や作業に対しては見習える面はあるけれど,
いかんせん人間性が悪くて何かと腹が立つことが多い。
母親はあきらめ半分で親父と連れ添っているけれど,
親父が心を許していたのは,たぶん飼い犬だけ。
名前は「とら」。柴犬っぽい雑種のメス。かわいい。
家族みんなでかわいがっていたが,
とらは家長が誰かを理解しており,親父にべったり。
親父がとらを叱りつけ,数日相手をしないと,
とらはストレスでご飯を食べられなくなるほどで,
愛想がなくて怖い親父だけど,常に寄り添っていた。
相思相愛の関係で,家族は正直蚊帳の外って感じだった。
とらも老犬となり,いろいろと衰えてきて,
家族が反対するにもかかわらず,
親父は自分が飲んでいるサプリを飲ませたりもしていた。
でも,最後の時が近づき,
そんな時でも親父はいろいろとサプリを飲ませていた。
母親に聞いたところでは,
晩年は吠える元気もなかったのに,とらが最後の夜を迎える時は,
まるで親父を呼ぶかのように「ワォー」と吠えていたらしい。
あえて犬小屋に行かなかったようだが,
翌朝とらは息をしていなかった。
冷たくなったとらに触れ,僕も母親も泣いた。
その朝,親父と顔を会わせることはなかったが,
ムスッとした表情をしていたらしい。
家の敷地内の庭にとらを埋めてやるとのことで,
親父と母親の二人で,最後を見届けた。
仏頂面のまま親父が土を掘り返し,
とらの大好きだったちくわを一緒に入れてあげた。
その瞬間。
親父が肩をふるわせて,「とらー」と叫びながら
ボロボロと涙を流して大泣きしていた。
そんな姿を見たことのない母親は呆気にとられ,
この人にもそんな部分があったのかと驚いた。
(母親は完全に悲しみも吹っ飛んだとのこと)
埋め終わるまで泣き止むことはなく,
とらとの別れを終えると,
「誰にも言うなよ」と母親に釘を刺し,
赤い目をしたまま家に戻っていった。
この話を聞いて,
普段の親父からは絶対に想像できない姿に,
ちょっと今でも信じられない気分だったりもする。
それ以上に,そんな姿を見たくない,という思いもある。
なんだろう,この天邪鬼な感情は (^^;)
それだけ親父には苦労させられたってことなんだろうか。
そういう面があるなら,
もっとやさしくなってもいいだろうに,
相も変わらず話しづらくてとっつきにくい親父。
つい最近も,ケンカしたばかり。
まぁ,まだ言い合いができるくらい元気なら,
当分は親父のつくる野菜を楽しめることだろう。
働く姿に対して敬うことはできても,
性格面を好きになることは絶対にない(キッパリ)!
っていう親父のありえない姿を
(実際には見ていないけれど)
垣間見たエピソードでした。