【額縁5】リスニングルームが広がったよう

額縁

投稿者:tao@東京さん
製品名:額縁5


我が家のリスニングルームは長方形をしている。
長いほうの辺の長さは4.1メートル。
短いほうの辺の長さは3.2メートルである。
床面積は4.2×3.2=13.12㎡である。
関東間の8畳間は、12.39㎡であるから、ほぼ8畳ほどの広さということになる。

4人家族が暮らす家にオーディオ専用ルームを持つことは、一般的にはとても困難なことであるので、贅沢は言えないが、「もう少し広ければ・・・」という思いが頭をよぎったことは一度や二度ではなかった。

しかも、このリスニングルームはオーディオ「専用」ではない。
妻のアップライトピアノとの同居を余儀なくされている。
もともと応接間であった部屋を防音仕様にリフォームする際に、「ピアノの練習も時間を気にせずにできる・・・」と妻をどうにか説得した経緯があるので、これはやむを得ないことである。

 

スピーカーは短辺側の両コーナーに設置してある。
そのスピーカーはTANNOY GRFである。
搭載されているユニットはモニター・シルバーで、キャビネットは英国オリジナルである。
文化財的な価値もある貴重なスピーカーをインターネットでたまたま見つけ、後先考えずに購入してしまった。

8畳の広さのリスニングルームには大きすぎるスピーカーであることは明白であった。
GRFの前に使っていたのは、TANNOY CHATSWORTHである。
GRFより二回り以上小さいスピーカーである。
そのスピーカーでちょうどバランスが良かったのであるから、どう考えてもGRFはこの部屋にはオーバーサイズである。

それ故「もう少しリスニングルームのエアボリュームがあれば・・・」という思いが、沸騰した湯からぼこぼこと気泡が沸き立つように、心の中から湧き上がったのは自然の理である。

このスピーカーを駆動するアンプはMarantz Model7とModel2のペアである。
残念ながらModel7は現在具合が悪く修理中のため、知人からお借りしているパイオニアのC21が代役として活躍している。

スピーカとアンプはいずれもヴィンテージに分類される古いものであるが、レコードプレーヤーとCDプレーヤーはともにORACLE製の煌びやかな製品で、比較的新しいものである。

現状では、やはりスピーカーの大きさと部屋の広さのバランスが悪く、音楽がゆったりとは鳴ってくれない。
リスニングポイントに覆いかぶさってくるような切迫感があり、反響による間接音が音の周囲を覆う前に直接音が耳に届きがちである。

このようなリスニングルームの状況を解決してくれるかもしれないアイテムが、Ge3から出ることを知ったのは、2ケ月ほど前のことであった。

そのアイテムは部屋の壁に設置するとリスニングルームの4面の壁、さらには天井と床が後方へ下がるような聴感上の効果をもたらすという。
つまり部屋が広くなったように感じるというのである。
「そんなことあるわけない・・・まったく馬鹿げている・・・!」というのが、オーディオマニア100人中98人の反応であろう・・・

しかし私は、月に一度レコードを聴かせていただいているtannoy@東京さんのリスニングルームで試作段階のそのアイテムの効果のほどを耳にした時、「これは・・・!」と期待感を抱いた。

そして、そのアイテムが我が家にもつい先日到着した。
正式な製品名はまだ未定とのことであるが、その見た目から「額縁」と呼ばれている。

これを、Ge3流の起動処理をしてから、壁に取り付けた。
どの壁でも効果は変わらないということであったが、リスニングポイントの後ろの壁に設置した。
リスニングポイントの背後には妻のアップライトピアノがあるので、そのピアノの上の壁にその「額縁」は現代美術のオブジェかなにかのように飾られた。

額縁

そのうえで聴きなれたCDやレコードを数枚聴いた。
神妙な面持ちで耳を傾けた。
「確かに変わる・・・」
心の中ですぐさま呟いた。

切迫感が薄らぎ、音楽がゆとりの表情を携えるようになった。
余裕のない一生懸命さが和らぎ、聴き疲れしない雰囲気を纏う。
目を閉じると、狭いはずのリスニングルームが広がったような錯覚に陥る。
もちろん、目を開けると部屋は狭いままである。

私はクラシックしか聴かない。
クラシックに限って言えば、間接音成分が増え、サウンドステージが後方へ広がるので良い効果があるようである。
しかし痛いほどに音をダイレクトに浴びたいという向きには、マイナス効果をもたらすかもしれない。

2,3日に分けて何度か「額縁」を飾った状態で聴いた。
概ね印象は最初の時と変わらない。
少し気になる点は低域の量感が若干すっきりとしてしまった点であろうか・・・

この「額縁」・・・
狭いリスニングルームで四苦八苦しているオーディオマニアにとっては、「救世主」となる可能性を秘めている。
ただし、その前提条件としては、この強烈な「いかがわしさ」を受け入れることのできる「度量」が要求される。
おそらく受け入れることができるオーディオマニアの比率は2%くらいであろうか・・・