【茅蜩】走りが楽しい、別の車になる

投稿者:らんさぁ@蝦夷さん
製品名:茅蜩(販売終了)


らんさぁ@蝦夷さんのCar情報

車種=スズキ パレット
年式=2012年
排気量=660cc


<長ったらしい、うんちく>

『茅蜩(ひぐらし)』、読めなくて最初私は「かまぼこ」って読んでいました。なんでだろ?
私が「Ge3って凄いかも」って、そう思ったきっかけが『茅蜩鼓粒』の説明記事にあった「マスダンパー」の考え方でして、本来なら一番最初に買っていておかしくない商品なんですが、石鹸に目を奪われましたので・・・

その間、別にボケーッとしていたわけではなく、自分なりにマスダンパーなるものを理解しようと頑張っていました。
「マスダンパー」でググると一番ヒットするのがミニ四駆、次にルノーF1でした。
簡単にいえばオーバーハング部分にバネを介してオモリを付けたもの。



道路のでっぱりに車体が乗り上がった時は、オモリはバネでフワフワですから、車体についていかず元の位置(低さ)に残るわけで、この時オモリがバネを引っ張って(押し戻して)上に飛んでいこうとする車体を下に引っ張るわけです。

反対に道路の凹みに車体が落ち込んだときは、オモリはやっぱり元の位置(高さ)に残って、バネを引っ張って(押し戻して)車体を引っ張り上げようとする、と。

この繰り返しで車体が常に安定した姿勢を維持できるので、サスペンションが理想通りに動くことが出来るし、エンジン(ミニ四駆の場合はモーター)からの力を無駄なくタイヤの推進力に使えるようになり、舵を切ってもよく曲がる・・・・・・いいコトずくめ。

んじゃ、なんでそんなスンバラシイものをメーカーは採用しないのよ?
オモリとバネで簡単に乗り心地も走りの性能も向上する、簡単じゃん?

簡単じゃないんですね。
凄くお金がかかる。
そして、ミニ四駆ならオプションパーツのオモリとバネを付けるだけで出来ることが、実際の車だと根本的な設計変更が必要になったりするわけなんです。

具体的に言いますと、車の動きに影響をあたえるほどのオモリ、これってかなりの重さだってことです。
トランクルームに入れた荷物で、車の動きが変わるのって、かなり重たい荷物の時ですよね。
米一俵を積んだ時とか。
効果が出る最軽量のオモリを検討していったとしても、10kgにはなるでしょう。

んで、その重たいオモリが自由に動いても、そのオモリを支えるシャシーはびくともしない必要があるのです。
動くのはオモリだけですから、それを支えるシャシーまで一緒に動いたのではマスダンパーとして正常に動作しない。
ましてや、そのオモリを取り付ける場所はオーバーハング部分、つまり遠く離れた先っぽです。
釣り竿を想像したらわかると思いますが、手元から遠く離れるほどにシナリます。
シナらない非常に頑丈なシャシーでないと、オモリとバネが正しく動かない(シャシーがバネの動きをするとオモリが動かない)。

今のモノコック(正しくはセミ・モノコック)構造の車体では非常に難しく、実現するなら昔のクラウンみたいにラダー(はしご)型フレームを別途用意するとかが必要です。
と言いましても、あまりホイールベースから遠くに設置しますと、今度は慣性モーメントが増大して操縦性に悪影響が出ますから、実際にはタイヤのそばに取り付けることになりますが。

F1マシンは、カーボン・コンポジットというとんでもないお金のかかった凄く頑強なシャシーですし、そもそもの車重が500kg程度(2013年はドライバーを含めて642kgだったらしい)と軽いですからオモリも軽くて済み、市販車とは同列に語れないわけです。
ミニ四駆?あれは物凄く小さいでしょう?
だから、樹脂製の板に補強リブが入った程度のシャシーでも、十分な強度があるんです。
自動車のように大きく重たいものは、ギリギリの強度しかありませんから。

更に問題を難しくしているのが安全性の問題です。
衝突事故のとき、車体は上手に潰れることで衝撃を吸収します。
車体のオーバーハング部分というのは事故の時潰れるためのスペースだと言い換えることが出来ます。
そんな場所に頑強なフレーム。
衝突の衝撃が吸収されず、まともに車体に響きます。
そこに10kg単位のオモリがあるわけですから、ぶつかった相手にも重大なダメージを与えることになります。

オモリの支え部分も、はたして事故の衝撃に耐えられるかどうか。
耐えられなければ、急ブレーキの時なんかにいきなりオッパイミサイルならぬ「オモリミサイル」発射です。

そもそもの設計強度の問題の他に、海沿いに暮らす人なら潮風による腐食があるでしょうし、冬の高速道路は路面凍結防止に塩化カリウムという、潮風なんか可愛く思えるくらい腐食性の強い融雪剤を撒きます。
普通の人は車検の時くらいしか点検整備の機会って無いですよね?
その時ですら、部品交換をケチって「まだ大丈夫」って。
F1マシンの車検?というか点検整備は、走るたびにです。
ミニ四駆の場合は、コワレても持ち主の子供がうわーんと泣いていれば済む話ですから安全面はクリアしています。

もっと言うなら、現在の一般的なクルマはエンジンが前に搭載されています。
FF(フロントエンジン・フロントドライブ)およびFFをベースにした四輪駆動車だと、エンジンの搭載位置はまさにオーバーハング部分です。
昔と違って今はエンジンルームもギュウギュウ詰め。
マスダンパーを搭載するスペースなど、最初から無いのです。

 
<『茅蜩』シリーズの異様性>

現代の多くのクルマに本来なら搭載できないはずのマスダンパー。
もしかしたら本当の意味でマスダンパーの動作をするのは『地球独楽・弐(販売終了)』なんじゃないかとか思うのですが、ともかくマスダンパーとして発売されているのは『茅蜩』シリーズです。

長ったらしく薀蓄(うんちく)を書きましたが、本来ならば自動車本体に比べれば非常に軽いとはいえど絶対的には重たいオモリをバネで支え、それをシナること無く保持する頑強なシャシーが無ければ、マスダンパーというのは成り立たないということだけご理解いただければ十分です。
つまり車体の設計変更(いわゆる改造レベルでは無理)無しには実装できないわけで。

それが、手のひらに乗るほどちっぽけなものを、必要個数ダンパーの取付基部に、しかもガムテープ等で貼り付けるだけで良い。
どんな魔法だよ。

一般的なマスダンパーの常識からすると、ありえない、異常な商品が『茅蜩』シリーズであるとおわかりいただけるかと思います。

大きさについて。
現在の『茅蜩・鼓粒』より大きい(倍の長さ)とか、ユーザーレビュー等でスピーカーユニットに貼り付けている写真を見たりとかで、私の頭に出来上がった大きさは「ちくわ」サイズ。
かなり大きく、軽自動車には装着できないんじゃ?
安いし、チャンスなんだけどなぁ。
色々検討して結局「このセールは私のためにあるようなものなんだから、買わない訳にはいかないな」と注文するのですが。

買って、運送会社の発送日数のみという異様な速さで届いて(マジゲロびっくり)、開封。
すっごく小さい。

比較のために調度良いものを家捜しして適当に並べましたが、爪楊枝の長さというのが一番でしょうか。

実物を手に持った感じでは、無垢の金属特有の重量感があります。
熱収縮チューブ?の空き口から覗くと、5mmくらいの直径の金属棒、Ge3の解説によれば真鍮製らしいですが、それが2本横並びに見えます。
触感は非常に硬いです。
真鍮棒を、硬めのホットボンド(ホットボンドにも種類があります)のようなもので固めて熱収縮チューブで包んだものという感じ。
マスダンパーに必要なバネの要素は感じられません。
正直、こんなもの効くのか?という出で立ちです。

 
<自分の車を改めて調べる>

注文前の話ですが、「発掘『茅蜩』セール」の告知が行われてから私が注文するまでの数日間、自分の車に付けられるのかどうかを調べていました。

なんとなく、
・軽自動車だからダンパー1箇所に2個
・4WDだから前後合わせて4箇所、計8個
と思っていたのですが・・・・・・

まあ、フロントはそれで良かったんです。
しかしリアが、実際見てみると「なんだこれ?」
ダンパーってのはバネの中にあるのがあたりまえだと思ってたんですが、私の車、バネはバネ、ダンパーはダンパーと、バラバラです。
Google先生で調べると、サスペンションは、

前:ストラット
後:I.T.L.

なんじゃい、I.T.L.って???
「アイソレーテッド・トレーリング・リンク」の略。
なんだか凄そう。
あれぞ?きっとアクティブ・サスペンションみたいなハイテクで・・・・・・

調べました。
・・・・・・ただのリジッドじゃねえか!
「スズキ独自の工夫」とやらはあるんでしょうが、結局は3リンク方式、コスト重視のリジッドサスペンション、スズキの軽は全部これ。

リジッドって・・・・・・
『茅蜩』の個数、×2ですね、わかります。
計12個。
かなり気持ちが萎えましたよ実際。

更に困った問題が。
どうやらダンパーはタイヤを外してしまえば交換できるらしく、つまり車内側に明確な、ここがダンパーだよって場所がない。
定規とかでおおよその位置を割り出して、そこに付けるしか無いわけで。
車内のその部分がダンパーに直結している可能性は疑問、もしかするとダンパーが取り付けられているシャシーとの間に隙間があって、浮いているフロアかもしれない。

さて、こうなると買うか、どうしようか、迷いました。
結局、ダメだったらスピーカーに使えばいいやって思って、買うわけなんですが。

 
<取り付け>

取付部を『おそうじシモン』で綺麗にして、家にあった両面テープと布ガムテープとで取り付けます。
使うテープ類について何やら色々情報が多いですが、肝心なのはしっかり取り付けることです。
二度と離れないように接着剤で固めるのがベストなんでしょうが、私の場合はダメだったら即座に剥がすつもりですから、特にこだわりはありません。
それよりも使うテープ類の寿命(糊の寿命も込みで)を考えて、半年から1年に1度は貼り直すつもりでいたほうが良いのではないでしょうか?

フロント部はちゃんと、Ge3の説明通りのダンパー取付基部がありますので、そこに。
ここで問題発覚。
せんせい、ぼくの手がゴツすぎて、こんな狭いところに上手に貼れません!

仕方ないので手の入る場所に、まとめて2個固定。

反対側は、もっと狭い。

エンジン側が溶接跡で盛り上がって平らでないことを考えても、今回貼った場所がベストだと思うことにします。

リア側はテールゲートを開けて、リアシート後ろの床(パンク修理セットが入っている)の板をはぐって、ここだろうという場所に貼り付け。

反対側。

ここだろうという場所に、『茅蜩』を4本/箇所ですからくっつけて並べて、安物の両面テープで位置決め、布ガムテープで固定。

この上に蓋が乗るのですが、なんとかうまい具合に蓋も浮き上がらず収まってくれました。
上に蓋が乗ることもあって、リア側のガムテープはかなりおざなりです。

 
<インプレッション>

『茅蜩』の実物を手に持って感じた硬さから、馴染むのに1週間はかかるだろうと踏みました。
これはGe3の言う「探索」の結果などではなく、全くの勘です。
効果がなければスピーカーに使う気マンマンですが、これは貼った場所の不安からも、効果が出るかどうか怪しく感じていました。

走りだし、何も感じません。
ジッポーのライター程度のオモリをガムテープで貼り付けたからといって、何が変わるというのか。
・・・・・・と、思っていた時が私にもありました。

5分ほどで、来たよ来ましたよ違和感が。
リアが高くなった感じ。
リアタイヤだけ車高が変わるくらいパンパンに空気を入れたような、後ろから押されているような。
この感じが1,2日続きます。

3日目。
用事があって普段とは違う道で会社から帰宅することになった私は、久々にお気に入りの田舎道を走ることにしました。
化けていました、クルマが。

それまで常に1トンある車重を意識させられる重たい印象が、完全になくなって。
ヒャッホーイ、そう叫びたくなるくらい、クルマが軽く動きます。
相変わらず後ろの車高が上がっているような感じですが、それがリアタイヤの駆動力を上げているかのよう。
ああ、これが4WDだ、そう思える走り。
若干の不安定感といいますか、走りの中心といいますか駆動力の中心といいますか、それが運転手である私を追い越して、足の裏にあるような不安定さがありましたが、思わず楽しくて、やっぱりヒャッホーイ。

5日目。
走りの(駆動の)中心が自分を追い越してる不安定感が消えました。
クルマが数百キロ軽くなったような印象。
走るのが楽しい。ついついアクセルも踏んでしまう。
燃費?
アクセル踏んでいるからか若干悪化しているようですが、その対価がとても大きいので気にならない。
クルマの判断材料の一つとして、情報としては有りだと思う、燃費ってその程度の話ではないでしょうか?
燃費がどれほど良い車でも、結局は個人の快適さや楽しみのために貴重な資源を浪費している、どんなに言葉を飾ろうと自家用車のその現実を直視し丸呑みしていくべきだと私は思います。
(地域性もあるのでしょうけど、ハイブリット車オーナーの品性と知性の感じられない運転を見るたび、私はゲンナリします)

7日目。
完全に安定、常にヒャッホイ。
走りの中心が自分を追い越す不安定感も完全消失。
苦手だった家の近くの急坂も普通に登ります。
3日めのヒャッホーイあたりから滑るように走る感覚が出てきました。
こんなもので、ここまで車の印象が変わるって、まさに「げげげ」です。

 
<まとめ>

理屈で考えるなら、Ge3の解説にあるようにサスペンションが無駄なく理想的に動くようになったんでしょう。
それを感覚で表すなら、「ヒャッホーイ」。
走りが楽しい、別の車になる。

ここで、もっともっとと、よりGe3商品を試していくのもありなんでしょうが、私としては満足行く結果が出たということで、
ここで車はストップ(『地球独楽・弐』に未練タラタラですが)。
オーディオに本腰入れていこうと思います。

それにしても『茅蜩』、後継現行商品の『茅蜩・鼓粒』より大きくて使いにくい印象でしたが、実際使ってみますと小さいですし、場合によってはこちらのほうが使いやすい(長いが細い)場面も多いと思います。
今回の私の場合も、案外と『茅蜩』で良かったな、そう思っています。
もしかしたら『鼓粒』だともっと苦労したかも・・・・・・
実質ほぼ同等、使い分けをすれば良いというわけで、今回の発掘品放出はそういう意味でもチャンスですね。
半額ですし。

散々悩みましたが、良い買い物を出来ました♪


◆スタッフコメント

きさ@Ge3です。

マスダンパーの効果をご理解いただき有難うございます。
”ヒグラシ”はクルマの衝撃を利用して慣性質量を高めています。
その為、1個で最大約3.6kgの重さのマスダンパーとして働きます。
”ヒグラシ”でのマスダンパー効果は日本の道路事情に合わせています。
具体的には12mm以下の道路の凸凹にチューニングしています。
日本の道路ではこの程度のマスダンパーで充分だと思います。
さらに荒れ地には個数を増やして対応できます。

例:
山岳ラリー 5倍
ヒマラヤやアフリカの原野 4倍

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA