【大地7 KEBONY】端正にして自然

投稿者:tao@東京さん
使用製品:大地7 KEBONY


1.初日

我が家のMarantz Model7とModel2は117V仕様である。
それゆえ、100Vの電圧を昇圧トランスで昇圧するか、または200Vを降圧トランスで降圧する必要がある。
私が選択したのは後者であった。
「200Vの方が良いのでは・・・」という根拠のない漠然とした考えからであった。

その降圧トランスであるが、それなりの大きさがある。
今まではリスニングルームの片隅の床に直置きされていた。
トランスなので時折唸り音が出る。
唸り音が出るということは結構振動しているのは間違いがないはずである。

「降圧トランスの下に何かしら対策したほうが良いのでは・・・」と思い始めた。
オーディオボードを敷いてその上に降圧トランスを置くのが一番手軽である。
オーディオボードというと一般的にはレコードプレーヤーの下やCDプレーヤーの下に置くことが多い。
音に対する影響度は結構大きく、それゆえ製品数も多い。

以前から気になっていたGe3のオーディオボード「大地7」を試してみることにした。
Ge3では「お試しサービス」を実施している。これはありがたいサービスである。
自宅で実際に試してみてその効果のほどを検証してから、購入するか否か決められる。

この「大地7」であるが、その仕様によって2種類ある。
ノーマルバージョンとKEBONYバージョンである。
「お試しサービス」を依頼したのはKEBONYバージョンである。
ノーマルバージョンの色は鮮やかな赤で、KEBONYバーションは濃い茶色。
我が家のオーディオ機器やラックの色合いとのバランスを考えると、ノーマルバージョンを選ぶという選択肢はない。

その「お試しサービス」による「大地7 KEBONY」が届いた。
「お試し期間」は2週間。
その間実際に使用して採用するか否か決める必要がある。

早速開封した。
「お試しサービス」ではあるが送られてきたのは新品である。
「えっ・・・新品だけど・・・」とちょっと驚いた。
オーディオボードとしては薄型ではあるが重みはしっかりとある。

「大地7 KEBONY」はベースが木でその上に鏡面仕上げの金属が乗っている。
その金属部分に機器を設置する。
金属部分の大きさは30cm×45cmである。
一般的な大きさのオーディオ機器であれば脚がはみ出てしまうことはないであろう。

今回「大地7 KEBONY」を試してみるのは、降圧トランスである。
オーディオ機器的ないでたちをしていないので、降圧トランスは今までは床に直置きにされていた。
その大きさは横幅が20cmで奥行きが34cm高さが20Cmである。脚はゴム脚。

床に「大地7 KEBONY」を置いて、その上に降圧トランスを乗せた。
トランスは結構重いものである。
一人で持ち上げることができる重さではあるが、腰を痛めないように気を使いながら作業をした。

作業は無事完了した。
このトランスにはレコードプレーヤー、プリアンプ、パワーアンプの電源コードが接続されている。
そこでレコードを聴いてみることにした。
最近よく聴いているレコードを2枚選択した。

Ge3ではオーディオアクセサリーを使用し始めた直後は「トレーニング期間」と呼んでいて、その期間においては一時的に低域が軽くなったりすると注意喚起をしている。
時間の経過とともにそういったマイナス面は解消されていくようである。

さて、選択した2枚のレコードを聴いた。
「トレーニング期間だから期待値は低めで・・・」と思いながら耳を傾けた。

するとその音の印象は「糊付けされてアイロンがかけられたばかりのワイシャツのような折り目正しい音」というものであった。
「ずいぶんきちっとした音・・・」
一言でいうと「端正な音」というべきか・・・
あるいは「まっとうな音」と評するべきか・・・・

「確かに少し高域寄りにシフトしたような気がする・・・」
「トレーニング期間が終われば低域も出て相当変化するのでは・・・」
と思いながら2枚のレコードを聴き終えた。

きささんからメールが来ていた。
「使用状況の写真を送ってください・・・」とのことであった。
そこでスマホで写真を撮って送ったところ、「機器のゴム脚ではなく、もっと硬質なインシュレーターを併用したほうが良い・・・」とのアドバイスを頂いた。

「ゴム<樹脂<金属<セラミックの順番で濁りが取れる・・・」とのことであったので、使っていないインシュレーターから「SYMPOSIUM ROLLERBLOCK JR.」を見つけた。
これはアルミ製のベースの上面中央が窪んでいてそこにタングステンボールを乗せて機器を受ける構造のインシュレーターである。

「ゴム脚よりは良いはず・・・」と使ってみた。
これは効いた。
アイロンがけする職人さんが新人さんからベテランに変わったかのような変化であった。
「あら・・・アイロンがけする人によって仕上がりがこんなに変わるんだ・・・」
と思いながら再度レコードに耳を傾けた。

 
2.1週間後

「お試しサービス」として、我が家のリスニングルームに「大地7 KEBONY」がやってきたのは先週の土曜日のことであった。
ちょうど1週間が経過した。
送られてきた「大地7 KEBONY」は「お試しサービス」ではあったが、新品であった。
つまり、実際に使ってみて「これほしい・・・!」となった場合、「お試しサービス」の品を送り返すことなく、購入の意思表示をすれば、そのまま使うことができるという訳である。

さて、トレーニング期間はおそらく1週間ほどでほぼ完了したはずである。
もちろんさらに時間が経過することによる変化はあるであろうが、印象ががらっと変わるという可能性はないであろう。

ちょうど1週間前、「大地7 KEBONY」を床に直置きだった降圧トランス(おそらくノイズカットの効果もあるはず)の下の敷いた時には「糊付けされてアイロンがけが終わったばかりのワイシャツのように折り目正しい音」という印象を受けた。

その後の時間の経過による変化を抽象的な表現で表すならば「大地に根を張ってより自然な佇まいになった・・・」とでも言うべきであろうか。
いろんな要素が整って端正な表情になったのは1週間前と変わることはないのであるが、その表情が自然で穏やかなものに変わった。
ある面においては「本来に戻った」というような感じを受ける。

オーディオの調整において、オーディオボードやインシュレーター、ケーブルなどを上手く活用すると、より透明度が上がり、4Kテレビ並みの解像度や埋もれていた微細な音情報がもたらされたりするが、そういった走査線数の大幅な増加による「恵み」というよりも、地中にしっかりと根を伸ばし、踏ん張っていることによりもたらされた自然で端正な質感という「恵み」を、このオーディオボードはもたらしてくれるようである。

「触れると指を切りそう・・・」といった質感ではない。
(我が家のヴィンテージ・オーディオにそういった要素を求めてもどだい無理な話ではあるが・・・)
心理的には「安心感」「安定感」といったものをもたらしてくれる。

電源はオーディオの源である。
そこに直結するトランスに使用したからか、「土台を支えています・・・しっかりと・・・」というメッセージを「大地7 KEBONY」は発信してくれているようである。

ウェーバーのクラリネット五重奏を聴いた。
1週間前にも聴いたレコードである。
A面にはモーツァルトのホルン五重奏曲 KV 407が納められている。
ウェーバーのクラリネット五重奏曲はB面である。

クラリネットはレオポルド・ウラッハで、シュトロス四重奏団との共演である。
スイスの「ELITE SPECIAL」というマイナーレーベルである。
モノラルで、1950年代後半か1960年代初め頃の録音と思われる。
実に心に沁みる。

「大地7 KEBONY」の上に降圧トランスを乗せることによって、そういった古いレコードがもたらす心理的滋養効果がより心に沁み込みやすくなったのは確かである。
「端正にして自然・・・」何度か首を縦に振りながら、聴き入ってしまった。