【箱 断断断】自然でリアリティ感のある場の雰囲気

投稿者:tao@東京さん
使用製品:箱 断断断


我が家のリスニングルームの広さは8畳ほどである。
リスニングポイントの背後には妻のアップライトピアノが置かれているので、実質的な有効面積は6畳ほどかもしれない。
(妻がピアノの練習をする時には、リスニングポイントに置かれたイージーチェアを前に押し出してピアノの前に座る。)

リスニングルーム内には、オーディオ機器やアップライトピアノ以外には1960年代にデンマークで作られたヴィンテージ家具が置かれている。
この時代にデンマークで作られた古い家具達は独特の穏やかで深みのある雰囲気をもたらしてくれる。

ユニークなオーディオアクセサリーを製造販売しているGe3のもっとも新しい製品である「箱 断断断」が発売されたことは、先日知人からその知らせがメールで届いた。
そこで、我が家にも早速導入した。

「箱 断断断」はその名の通り「箱」であった。
届いたのは桐の箱。
サイズは横22cm奥行き19cm高さ16cmである。
それほど大きくはないが、小さくもない。
中には由緒正しき陶器が入っていそうな箱であるが、もちろん陶器が入っているわけではない。
その外観は完全に「和」である。

この製品は、リスニングルーム全体の空間に作用するとのことである。
部屋のどこにおいてもよいとのこと。
ただし、先に導入した知人によると「ベストな位置は左右のスピーカーの中間地点・・・」とのことであった。

そこでその完全に「和」のテイストを発散している「箱 断断断」をスピーカーの中間地点の床に置いてみた。
我が家のリスニングルームは狭い。
ニアフィールドリスニングである。
そのため、その箱はリスニングポイントからかなり近い床に置かれることになる。

「なんか、視覚的に違和感があるな・・・」
「部屋の1960年代のデンマークのヴィンテージ家具の雰囲気と明らかに相いれないものがある・・・」と思った。
「ここには、置きたくないな・・・」と思いながらも、まずはその音響的な効果を確かめた。

先に導入を済ませた知人からは
「『断断断』では音のエネルギー感や密度感が上がるという方向性での変化があったが、『箱 断断断』の効果はそういう方向性での変化ではなく、音場の広さや奥行き、さらにその精度の向上に効果がある・・・」
との情報を事前に受けていた。

ブラームスのピアノソナタ第1番、ジョン・ミルフォード・ラターのレクイエムを聴いた。
我が家の狭いリスニングルームでの「箱 断断断」の効果を一言で表すならば、「素になる・・・」というものであった。

Instagramなどにあがる女性の顔写真はそのほとんどが加工アプリにより加工されているため、その眼の表情や顎のラインに違和感を感じることがあるが、そういった違和感をもたらす加工が全て剝ぎ落されるような変化を、「箱 断断断」は、リスニングルーム内に響く音とサウンドステージにもたらす。

そのためか、自然でリアリティ感のある場の雰囲気がもたらされるような気がした。
その感触は、「素」である。
女性が化粧を落とし素顔に戻った瞬間に感じるようなほっとする感じであろうか。
人工的なもの、表面的な加工、肌呼吸を妨げる化粧品・・・そういったものが薄くなり、消えていく。

その音とサウンドステージに与える影響は良い印象であった。
ただし、設置場所に関しては、やはり視覚的に違和感があったので、リスニングポイントの右後ろにあるローズウッド製の小さなチェストの下に移動した。
ここに置くと、私の視界には一切入ってこない。

ここに置いて、再度音に対する影響を検証した。
「素」になる効果は同じくあったが、その効果の大きさは若干後退した。
「でも、ここに置こう・・・」視覚的な心地よさは私の場合、とても重要なテーマである。

「それにしてもGe3の製品名って、インパクトあるな・・・」
『断断断』の時はその音の響きから、「そういえば、かなり前に『段田 男』という変わった名前の演歌歌手がいたな・・・」と脈絡なく思ったが、
今回の『箱 断断断』では、「ハコ・・・」という言葉の響きに「そういえば、1970年代に活躍したシンガーソングライターに『山崎 ハコ』という女性がいたな・・・」と思った。

彼女の代表曲は「呪い」。
一度だけこのインパクト強烈な曲が、あの「ちびまる子ちゃん」のエンディング曲としてかかったことがあって、結構話題となった。
その歌詞は実に強烈である。

コンコン コンコン 釘をさす コンコン コンコン 釘をさす 畳が下から笑ってる

コンコン コンコン 釘をさす コンコン コンコン 釘をさす 藁の人形釘をさす 自分の胸が痛くなる 

一度聴くと、頭から離れなくなるメロディーと歌詞である。
この曲が多くの小学生が観ていた「ちびまる子ちゃん」のエンディング曲として流れたことは、作者であるさくらももこのアングラな一面を見た思いであった。

「箱 断断断」を設置したリスニングルーム・・・
その照明を暗くして、山崎ハコの「呪い」を聴く。
実際に釘を打つ音がリアリティ感満載で聴こえてくるかもしれない・・・・
そして、音が響き合う薄暗い空間には、ほのかに山崎 ハコの悲し気な背中が見えてくるのかもしれない・・・
そんなことを妄想した。