昨日制振対策済み電源ケーブルが到着しました。
元の素材はアクロリンクのストレスフリー三芯電源ケーブルに松下の3Pアウトレットプラグとオヤイデの3Pインレットプラグ(いずれも最廉価版)をつけただけのものです。
帰ってきたケーブルはジュニア・ヘビーだったダイナマイト・キッド(好きだったなあ,この人)がヘビー級にウェイトアップしたかのような変貌ぶりで見るからにたくましい音が聞こえてきそうでした。
元通りにCDPの電源としてセットします。以下気がついたことをとりとめなく書いておきます。
◯一般にCDが不得手とされるエネルギー感は難なく再生されます。アナログに匹敵します。
◯とにかく情報量が多いという印象を受けます。音自体も緻密で滑らかです。
◯ミドルテンポの70年代カントリーロックではいきなり音が左右のスピーカーからあふれ出るように聞こえてきました。圧倒されます。音の量(大きさではありません)そのものが増えた感じです。
◯音像がもりもりとしています。
◯音の厚み,深み,力感とも凄まじい向上をみせます。
◯私が最も重視する音の立ち上がりや質感は今まで自分の装置で聞いたことがないほどすばらしいものがあります。
◯ボーカルの張りと伸びは際だっています。
◯これらの傾向がアップテンポの曲ではさらに強化されます。
◯しかし,ライブ音源での後方の微かなシンボルやブラッシングの音も確実に聞こえてきます。ブルースハープが誇張されることがなく歪むこともなく空気が フッと吹き抜けていく感覚がよく出ています。ウッドベースは出しゃばることなく,しかし濁りのない確実なリズムを刻みます。バスドラ同様,ごりっとした筋 肉質の音を聞かせてくれますが,ゆったりした演奏の場合はそのとおりの柔らかさも出してくれます。
◯弦楽器の弦の発音と,胴の響きのバランスも良好です。
◯気配といったものもかなりできています。ただアルバムによっては,ミュージシャンがしゃべっているのが聞こえすぎという点がなくもありません。このあた りはジャズ録音では当たり前にあることなのでむしろ楽しいと言うべきでしょう。とにかく細かい音も漏らさず絞り出すといった感じです。
◯音楽のノリの良いということも特筆すべきでしょう。
◯周波数的には下の方がさらに伸びた印象を受けます。
◯コルトレーンとハートマンのモービルフィデリティ盤は圧巻です。アップテンポの曲とは打って変わったゆったりとして柔らかなしなやかさのあるバラード演奏になります。ただコルトレーンは一歩前にでてきた感じです。
◯さてチェンバロ独奏では,立ち上がりのよい弦の音とそれがふわりと周囲に広がっていくイメージが出ています。湧水の中央が盛り上がり四方八方に流れてい くといった印象です。ただ,メカノイズも鮮明に出ています。ごとごとと床の響く音がします。オフ気味のチェロとピアノのデュオでは,柔らかで豊かな響きを 聞かせてくれますし,フルートも浮遊感たっぷりの高域を奏でてくれます。
◯音場に関するレポートがないのは,私のシステムが,スピーカーの後方に広がる広大なステージに,ピンポイントで定位する音像といったイメージを目的とし てないからですし,私自身もそういう方向にほとんど興味が湧かないからです。客席できくというより,ステージ直近で聴くイメージを求めて調整してきた音像 型のシステムですので,その傾向がこのケーブルによって増強されるというべきでしょう。従って,クラシックのフルオーケストラを響きがたっぷりあるコン サートホールで聞いているような方向で調整されたシステムでは,また別の傾向が際立つのかもしれません。
◯現段階で問題があるとすれば,エネルギー感の強度,音像との近接性,鮮度の高さが,場合によってはきつさ,鋭さとして受け取られる恐れがあるというとこ ろです。音量を上げてもうるさい感じはしないのですが。少なくとも私のところでは,これは良い方向に作用しています。しかし,豊かな響きの間接音にすっぽ りと包まれる心地よさというよりも,直接音の奔流に身を任せるといった感じの再生音として命を吹きこまれたように感じています。ですから,人によっては私 の音が息苦しいと感じる人(多分同業者のIさんなんかそうだろうなあ。)もいるんでしょう。SPケーブルの力蛇に対応する大蛇(ビッグじゃ)かもしれませ ん。違う線材の電源ケーブルでテストされる人柱の方がいるとよいですね。
これが後2,3日のトレーニングでどのような変化を見せるかというのが楽しみです。
結論としては,全部このケーブルに変えても良いのではないか,と思うくらいでいます。
他方,他の機器に使用している特注電源ケーブルの音も捨てがたい魅力があります。こちらの方は曲げたら曲がったまま,伸ばせば壁に立てか掛けられるという代物ですので,今まで制振対策に苦労しましたが,大黒アゲハで対策が可能なら実行してみたい気もします。
いずれにしても,私のショボイ電源ケーブルを,超弩級のケーブルに改造していただきありがとうございました。
このテクニックを公開又は商品化していただき(当然ですが,大黒アゲハをはってSFチューブをかぶせただけではないですよね?),皆さんにもぜひ体験してい ただきたいと思います。前日のS757V用蛍イカ対策済み平行2芯ケーブルの好印象が一気に色あせました(いいんだか悪いんだか(笑))。でも,こちらの ケーブルにも大黒アゲハ対策を真剣に考えさせるだけのものがあります。フジクラの5D−SFAを使ったUBYTEスピーカーケーブルの制振にも使えそうで すね。いや,楽しみがいっぱいです。多分ケーブルには制振のしすぎということはないはずなので,気合いを入れてやる価値があります。
最後に,アンプを変えたみたいな変化です,と付け加えておきましょう。機器を代えるくらいなら,電源ケーブルにこの対策をした方がいいんじゃないかと思います。
このケーブルの音を聴いて精神状態が普通じゃないので文章がおかしいところはご勘弁下さい。
以上
■続報
初期の洪水か津波のような勢いが勝っていた状態から,音が落ち着いてしなやかさが出てきました。流量たっぷりの渓谷の万感変化の流れとでもいったらよいでしょうか。
柔らかな音の場合でも高い分解能と解像度を示しています。それでいて,シャープな音のスピード感も衰えていません。
高い分解能のあるソフトな低域というのは,model2 Dacを聴いたときにも感じたものですが,model2 Dacでハードなジャズとかロックを聴くときに感じた物足りなさがこの電源ケーブルの音にはありません。
音楽の表情というか佇まいがよく表現されています。
映画などで,台詞がなくてもその人が画面にいるだけで存在感があるとか,ただ立って特別な演技をしていないのに万感の思いが伝わる,とかいう表現がありますが,この電源ケーブルから出てくる音にもそんな印象を受けます。一つ一つの音に意味があるという当たり前のことが当
たり前に表現されています。
これまで,LPがないからCDでも買うかというスタンスでしたが,ケブタ巻要石+延長ケーブル+ストヒ+とどめ+無振動電源ケーブルで,その垣根がなくなりそうです。
残念なことに,私の所には見事なくらいクラシックのCDがないのです。そのためフルオーケストラの再生に関しては全く報告ができないことはご容赦下さい。