情報量の増加も著しい(HHさん)

9月半ばのある晴れた日、きささんから電話を頂いた。本件の話が済むと、まずはSP脈々&要石セットを試聴してみなさい、と熱く語られた。Ge3製品の試聴に関しては「試聴→あまりの効果に驚く→そのまま購入」というパターンで予定外の20万円散財(大地3) という痛い目に遭っているので(笑)、そのときはとりあえず間に合ってます、とお断りしたのだった。しかし一度Ge3の魔力を知ってしまうとそこから脱するのはほとんど不可能のようである。数週間放置した後にも尚、脈々&要石セット試聴しないでどうする、という天の声が脳裏に鳴り続けたので、財布に残された乏しい諭吉さまの枚数を数え、意を決して試聴用セットの手配をお願いしたのだった。

まずは脈々単体のみをつないだ。Ge3製品を使うときにいつも感じられる情報量の増加、周波数レンジの拡大。試聴用ディスク(死の舞踏)冒頭、ヴァイオリンのピチカートで絃が弾かれた後に振動が胴体に伝わって空間に放出されるのがイメージとして感じられる。しかし激変と胸を張って言える程ではない。 今までのGe3製品と違うところはppや無音のところでの静寂感が増すことだろうか。音楽の鳴り方がわずかに生き生きとするような印象も。この時点では返品しようと思っていた。
次いで付属の要石を接続。情報量増加。上記、ヴァイオリンのピチカートと思いこんでいた音たちが実はハープによるものであることがわかった。絃の質量、胴体の質量がヴァイオリンのそれとは桁違いに大きいことが聴いていてはっきりと感じられる。しかし音の方向性としては好みではない。まったりつるつる系と言うか、聴いていて心地よくはあるが、それと引き替えに何か大切な要素を失っているようにすら聞こえた。ここでもまだまだ返品。諭吉さま安泰。

最後に、手持ちの要石(ウンコの化石に青Qを 塗ったもの)を追加してみると、これはびっくり。要石1個で不満だったところが見事に消え、音楽に生気が戻ってきた。「死の舞踏」が「舞踏」すなわち踊りの音楽以外の何ものでもないことを改めて思い知らされた。情報量の増加も著しい。たとえば冒頭のハープの音が一音一音次の音に移る一瞬前に、ペダルで切られているのを発見。ソロヴァイオリンが別マイクで録ってミックスされたのが克明にわかってしまうのはちょっと興ざめでもあったが。しかしそれは録音側の責任である。諭吉さま散る。

●おまけ

製品説明のページに

Ge3ではSPケーブルで最も重要な部分はSPから1m以内で、この1mだけでSPケーブルの性能の90%以上が決まると考えています。本製品を使用する ことはその1mに最高のSPケーブルを使うことを意味します。よって、アンプから本製品までのSPケーブルは、比較的安価なケーブルでも充分楽しむことが出来ます。

とあるので、これも試してみた。比較対象は力蛇N化とAV用に使っているパイオニアの安物ケーブル(4芯スターカッド巻きのものに両端を大黒アゲハ処理。AVアンプで使いやすいようにバナナプラグ付き)。

面倒なのでバナナプラグをつけたまま、力蛇もアンプ側は外さずにつけたままで試聴した。意外にパイオニアが善戦している、と最初は思えたがしばらく聴いていると勝負にならないことがわかる。音楽で最も大切な活きの良さが聞こえない。喩えて言えばウーファーのネットワークにコイルが入ったSPと直結SPの違いだろうか。

このままではパイオニアに申し訳ないので、バナナプラグと力蛇を外して再度試聴。驚くべきことにパイオニアの安物ケーブルが情報量で力蛇を越えている。しかし前述の音の傾向は変わらず。情報量を取るか、活きの良さを取るかの選択。これは悩ましい。結論として言えることは、脈々を買うなら(あるいは持っているなら)、とりあえず力蛇は買わなくてもいい、ということになるのかもしれない。きささん、商売の邪魔してごめんなさい。

試聴用ディスクは、サンサーンスの「死の舞踏」(バレンボイム/パリ管)
試聴用機器は

CDトランスポート:エソテリックP70
アンプ:ソニーFA1200ES (P70と銀蛇N化で接続)
SP:ベルテック・ベルズ

でした。